国際文化専門演習Ⅰ, Ⅱ

補助資料、名桜大学図書館の参考文献情報を、こちらに一元化します。
現在、基本的な連絡は授業時、メール、Universal Passportで行っています。

本科目(3年ゼミ)の履修にあたっては、前学期に「言語学概論Ⅰ」を、後学期に「言語学概論Ⅱ」または「英語学概論」を履修することが必須となっています。履修登録を検討するときは、あらかじめゼミのページと各科目の内容(シラバス)をご確認下さい。

通年で使用します。
3年ゼミで読み終えることができなかったChapterは、4年ゼミで続きを読みます。

参考文献

卒業研究の進め方ページのリストと検索・入手方法をご覧下さい。
各章に関連する文献は、該当箇所で紹介しています。[PDF] は、リンク先のリポジトリで読むことができる論文です。ここで紹介する論文等が、必ずしも最先端の知見に基づくものとは限りません。研究テーマとする場合は、各々で最新の動向について調べるようにしてください。

Chapter 1

加藤重広. 2019.『言語学講義:その起源と未来』東京:ちくま新書.


hellog~英語史ブログ」は、堀田隆一先生(慶應義塾大学)によるもので、テキストに関して気になる話題があれば、調べてみましょう。基本的に「英語史ブログ」内検索で、大抵の疑問は解決します。例えば、Proto-World、比較言語学関係の記事はこちら。

Sir William Jones
再建形は実在したか否か (3)
人類の起源と言語の起源の関係
William Jones 以前の語族観 (2)

各記事の内容をレポート・卒業研究に活用したいときは、各記事で付記されている原典をあたるようにして下さい。必然性がない限り、ウェブサイトの引用は避けるのが無難です。ウェブサイトからの引用については「卒業研究の進め方」ページの「先行研究についてもご覧下さい。


ぜひ英語史学習・教育のために hellog の活用を!(hellog~英語史ブログ)
上記「hellog~英語史ブログ」の活用(検索)方法について、説明書のようなもの。気軽に検索して、気になるトピックから理解を深めていくことが大切。各トピックに関連する文献情報も豊富。学習の出発点としてぜひ。


Chapter 2

高嶋由布子. 2020.「危機言語としての日本手話」『国立国語研究所論集』18: 121-148. [PDF]
著者は、手話言語学を認知言語学の観点から研究されています(リサーチマップはこちら)。この論文執筆に至った背景、関連資料(文献情報、動画など)が、論文題目と同名のnote記事に公開されています。

Chapter 2に関連する「手話は言語か」という議論には、

森壮也・佐々木倫子(編)2016.『手話を言語と言うのなら』東京:ひつじ書房.

のページが詳しいです(先の高嶋先生のnoteにも言及があります。「手話に興味を持った人のための和書本棚」も、あわせて)。関心のある方は、ご覧下さい。「手話は危機言語である」と語る前に、よく背景を理解しておく必要があります(認識が怪しいと思われる言説に注意)。Sophia Lecturesでも言及がありましたが(本講演の関連資料文献はこちらにまとめました)、各研究者が何に注目しているのか、注意して下さい。

手話研究に関心がある場合は、こちらも参照のこと(高嶋先生による情報):

森壮也. 2009.「手話研究者の倫理を考える:Aさんへの手紙」『手話学研究』18: 39-41.



人間の言語の特徴、8点(hellog~英語史ブログ)
人間の言語の特徴、言語の恣意性等について。詳しい説明、関連記事、文献紹介。


Chapter 4

・2014年3月に行われたNoam Chomsky教授の国内講演 (Sophia Lectures) の動画があります。英語字幕(自動)を使うとわかりやすいです。また、本講演は、こちらで論文化されています。講演の日本語版は、本学図書館に蔵書があります

・20世紀以降の理論言語学の歴史については、こちらの動画をどうぞ。構造主義言語学から生成文法、認知言語学、現在へと続く時代の渦中を生きた経験から、学問パラダイムの変化について論じた最終講義です。ぜひご覧下さい。


Chapter 6

名桜大学国際学部では、半嶺まどか先生の授業で触れる機会があるかもしれない。学生の卒業研究においても見られるテーマである(関心があれば、卒論題目一覧、過去の卒業論文を参照されたい)。


参考ウェブサイト・動画
子を「バイリンガル」に育てるのは楽じゃない|山下里香(Rika Yamashita) @note
「多言語使用のリアル―『面白い』を超えた先へ(ことば村・ことばのサロン)」(話題提供:山下里香先生)


参考文献
オパール・ダン. 1997.『ミセス・ダンのバイリンガル教育:親は最適の語学教師』東京:サイマル出版会.
コリン・ベーカー. 1996.『バイリンガル教育と第二言語習得』東京:大修館書店.
矢頭典枝. 2008.『カナダの公用語政策:バイリンガル連邦公務員の言語選択を中心として』東京:リーベル出版.
山本雅代. 1996.『バイリンガルはどのようにして言語を習得するのか』東京:明石書店.
山本雅代(編)1999.『バイリンガルの世界』東京:大修館書店.


森島泰則. 2015.『なぜ外国語を身につけるのは難しいのか:「バイリンガルを科学する」言語心理学』東京:勁草書房.
山下里香. 2016.『在日パキスタン人児童の多言語使用:コードスイッチングとスタイルシフトの研究』東京:ひつじ書房.
(本学図書館に蔵書なし)


Chapter 8

Brown, Penelope and Stephen C. Levinson. 1987. Politeness: Some Universals in Language Usage. Cambridge: Cambridge University Press.
ペネロピ・ブラウン, スティーヴン・C・レヴィンソン斉藤早智子他(). 2011.『ポライトネス:言語使用における、ある普遍現象』東京:研究社.

滝浦真人. 2005.『日本の敬語論:ポライトネス理論からの再検討』東京:大修館書店.
滝浦 (2005: 157-206) では、Brown and Levinson (1987) のポライトネス・ストラテジーが詳説されています。Brown and Levinson (1987) の会話例も、和訳とともに解説があります。

牛江ゆき子西尾道子. 2009.「日本語映画の英語字幕に見られるポライトネス」『通訳翻訳研究』9: 253-272. [PDF]
藏屋伸子. 2013.「リメイク映画を利用した日本語と英語の依頼行動比較:コンテクスト定義要因に基づく一考察」『国際情報研究』10(1): 38-49. [PDF]

杉野健太郎(編著). 2015.『映画とイデオロギー』京都:ミネルヴァ書房.
収録の井原論文も参照。



Chapter 12

教授法の背後に、到達目標がある。授業思想と実施方法、到達目標の測定としてのテスト・課題等の活用が有機的に結びついているか、複合的に授業設計の評価を行う必要がある。現在の大学において、FD, 授業評価アンケートは当然のように根付いてしまったが、果たしてその効果はどうか。本学で開講されている「英語科教育法」「日本語教授法」や教職科目群の知見、他学部・学科の学生の意見も交えて、授業のあり方について、学際的に議論する場があってもよい。これは大学の存在意義にも関わる話で、学生の声を届けることもまた重要である。全ての意見や声を反映させるべきかは、議論が必要であろう(後述する宇佐美 (2004) の指摘も参照)。ただ「議論する」だけでなく、必要な改善に繋げることが求められている。ただし、本当に「改善」となるのか、慎重に検討・評価せねばならない


Chapter 12を読む上では、以下のウェブサイトと文献が参考になる。

筑波大学大学院 英語教育学サブプログラム 卯城祐司研究室
サイドバーの「論文を書いてみよう」の「知恵の輪」に、用語集がある。術語がわからないとき、参照されたい。

石川慎一郎. 2023.『ベーシック応用言語学:L2の習得・処理・学習・教授・評価』(第2版)東京:ひつじ書房.(※名桜大図書館に蔵書なし)

授業では、テキストで紹介されている教授法について、意見交換を行う。和訳先渡しも体験する(Google Scholar検索で、関連論文を入手できる)。ここでは、各々の体験を相対化することもまたヒントとなるはず。


ここで、本学図書館所蔵の参考文献を紹介する。

久保田竜子. 2018.『英語教育幻想』東京: ちくま書房.
靜哲人. 2002.『英語テスト作成の達人マニュアル』東京:大修館書店.
静哲人(共編著)2002.『外国語教育リサーチとテスティングの基礎概念』吹田:関西大学出版部.
寺沢拓敬. 2020.『小学校英語のジレンマ』東京: 岩波新書.(著者によるブックガイドはこちら


WEB体験授業として配信されているものは、こちら(職位は当時の情報)。

大東文化大学外国語学部英語学科 WEB体験授業「歌を歌えば英語発音が上達するって本当?・・・本当です!」 (靜哲人教授)
背景にある授業思想はこちらまたはこちらの文献を参照(名桜大図書館の蔵書情報はこちら)。

東京外国語大学体験授業「(英語で)テキストを読むこと—文化研究のストラテジー」(講師:加藤雄二准教授)
「翻訳」という営みについて。翻訳については先行研究が多い。授業における「和訳」「講読」については、和訳先渡しの提唱以降、中心的な役割が揺らぎつつある(?)一方で、英文解釈系の本が話題となっているのも事実。英語教育が目指すべき方向は、どこにあるのだろうか。


宇佐美寛. 2004.『大学授業の病理:FD批判』東京:東信堂.
英語教育ではなく、一般的な大学の「講義」のあり方に関する論。「講義」「FD」「授業評価アンケート」に対し、痛烈な批判が行われている(筆者は「アクティブラーニング」にも批判的である)。静 (2009) の授業思想に通じるところも多い(と思う)。


京都大学高等教育研究開発推進センターは、長らく、FDの拠点として発信を行ってきた機関である(2022年9月30日をもって廃止された)。関係する研究者の文献は、FDの議論で引用されることも多い。本学図書館にあるもの(の一部)を挙げる。
溝上慎一. 2014.『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』東京:東信堂.
松下佳代.  2021.『対話型論証による学びのデザイン : 学校で身につけてほしいたった一つのこと』東京:勁草書房.


英語教育は多くの人が経験をもつので話しやすく、体験は人により異なる。世間には、個人的な体験に基づく「提言」をする者も存在する。現状、英語教育をめぐる言説は多々あるものの、国として一貫した政策に落とし込むのは難しい。具体例として、「センター試験」に替わる民間試験の導入については、羽藤由美先生(京都工芸繊維大学)のブログに詳しい。この論争が問題となった2019年当時、羽藤先生(現・京都工芸繊維大学名誉教授)を中心とする京都工芸繊維大学のスピーキングテストについての研究は、この分野の国内における最先端であった。
そもそも、スピーキングテストは、そもそも実施が大変である。また、正答が1つに定まらず、採点基準を統一するのが難しい(「ルーブリック」と呼ばれる基準を設ける等して統一を図る)。中高においてスピーキングをどのように教授するのか、担当教員の確保と育成はどのようにするのか。入試改革、民間試験の導入は正解だったのか。その過程と反対の署名、政府の対応については、羽藤先生のブログに詳しい:

「今回の入試改革の目的は,公正・公平に入学者選抜を行うことではなく,入試を変えることで教育を変えることである。教育の現場で育むことのできない能力を入試で問うことによって教育を変えるという本末転倒の荒業(禁じ手)が今まさに使われようとしているのだ」( 「入試へのスピーキングテスト導入賛成派としての反対」から直接引用)

小学校英語教育の問題点や、この手の動きに関する議論(総論)は、久保田 (2018)、寺沢 (2020) 等を参照。


Chapter 14

「方言か言語か」(hellog~英語史ブログ)
主に英語学、英語史、社会言語学の立場から。


以下、方言研究に興味がある方向け。

 藤原与一. 1964.『方言研究法』東京:東京堂出版. [PDF]
※広島大学 学術情報リポジトリ 

方言記述のリソース
下地理則先生(九州大学)のホームページより 

日本語の方言についての情報庫
小西いずみ先生(東京大学)のホームページより


新永悠人. 2022.「方言研究の類型論」『弘前大学国語国文学』43: 29-47. [PDF]


国語研(国立国語研究所)刊行物
日本言語地図、方言文法全国地図、方言談話資料、方言録音資料シリーズ、全国方言談話データベース 日本のふるさとことば集成、東北方言オノマトペ用例集、などがあります。



Chapter 15

第12回NINJALフォーラム 講演「方言はどこまで通じるか?」(2018年2月3日)  講師:国立国語研究所 田窪行則所長(当時)

沖縄の「方言札」についての話題もあります。講演資料は、ここで公開されています。
方言札については諸説あります文献を読んで考えてみましょう。名桜大学図書館蔵書では、例えばこちらこちらがあります。


参考文献
田窪行則(編)2013.『琉球列島の言語と文化:その記録と継承』東京:くろしお出版.
田窪行則・ジョン=ホイットマン・平子達也(編)2016.『琉球諸語と古代日本語:日琉祖語の再建にむけて』東京:くろしお出版.

参考ウェブサイト
宮古島のオトーリと挨拶文化|田窪行則@note
与論民俗村


余談として。名桜大学で開講の「琉球語学(概)論」は、各テーマの専門家が集う贅沢な授業なので、機会と余裕があれば、受講を推奨(楽しむことができれば、しめたものです。ただし、相応の背景知識は必要)。琉球語関係の参考文献(初級〜)はこちら。言語学大辞典も参照。

花薗悟. 2020.『初級沖縄語』東京:研究社.


余談中の余談として、以下のテーマも意味論・語用論から分析する余地は大いにあるので、興味があればぜひ卒業研究のテーマとしてご検討を(形態・統語レベルも不明な現象を記述する場合は、麻生ゼミで分析手法から学ぶことを推奨)。

宮平勝行. 2016.「沖縄ことばのモダリティ標識『しようね』の一考察」『言語文化研究紀要』25: 125-148. [PDF]
意味の漂白化、文法化(に伴う、文法機能の「一般化」)、といった観点から位置づけが可能のはず。


沖縄旅行で遭遇するかも!? 沖縄特有の言い回し&うちなーぐち(沖縄方言)10選(オリオンストーリー編集部)
調査環境が整っているのであれば、このような表現についての分析もよいと思う。取り扱う言語現象については、琉球諸語研究の文脈と術語を踏まえて適切に定義したい。武黒 (2014) のようなアプローチがヒントとなるか。

武黒麻紀子. 2014.「『合衆国』な石垣島での相互行為と社会関係 」『日本語用論学会第16回大会発表論文集』9: 341-344. [PDF]


Chapter 16

英語史における規範性議論も参照のこと。

Chapter 23で紹介する當山 (2019) では、「琉球諸語における言語多様性と継承の問題」という節で、標準語・共通語に関する議論が行われている。


Chapter 22

言語が減ることって問題ですか?への私の答え|下地理則(九州大学人文科学研究院准教授)@note


 消滅の危機にある言語・方言
文化庁のホームページより


日本の危機言語:日本の消滅危機方言の音声データを紹介するサイト

Chapter 23

東日本大震災において危機的な状況が危惧される方言の実態に関する調査研究
東日本大震災を機にまとめられた文化庁による資料です。ぜひ、各地域の資料を読み比べてみて下さい。すると、見えてくることがあります。第一に、「震災」の名で地域ごとに報告書が上がっていますが、言語資料には震災前に収集されたものがあること。例えば、2005年に収集したデータが報告されています。これはなぜか(震災は関係があるのか)。これは、震災を機に言語保存の重要性が意識され、それまでに収集したデータをまとめておこう、という問題意識でまとめられたことによるのでしょう。執筆によせての背景は、各報告書の「まえがき」などに詳しいです。第二に、地域ごとに目次・調査項目が異なること。これは、一見、調査上の「限界」と思えるかもしれません。しかし、現実的な問題として、各地で一貫した形の調査を行うことは難しい(いや、そもそも不可能)です。地域ごとに特化して調査すべき項目・優先順位は異なるでしょうし、調査協力者(話者として、あるいはアンケート回答者として)によっても行うことができる調査は変わってきます。調査の過程で「可能な範囲で、得られたデータ、調査結果をまとめる」という方向に収斂していきます。

 小川晋史(編)2015.『琉球のことばの書き方:琉球諸語統一的表記法』東京:くろしお出版.
異なる研究者が各地で取り組んでいる中でも、表記法の統一、グロスづけ支援など、相互に研究成果を参照・比較できるようにする取り組みが行われています。この著作は、その一例です。


當山奈那. 2019.「琉球諸語における音声教材作成について : 言語習得と方言教育と危機言語の記録保存の各観点から」『琉球アジア文化論集 : 琉球大学人文社会学部紀要』5: 161-183. [PDF]
言語継承・復興・保存に取り組んでいる研究者は、限られた時間を意識しながら、できることを地道に進めています。図書館の以下の本もぜひ。

大西正幸・宮城邦昌(編著)2016.『シークヮーサーの知恵 : 奥・やんばるの「コトバ-暮らし-生きもの環」』京都 : 京都大学学術出版会.

日本言語学会165回大会公開シンポジウム「琉球における言語継承活動の現状と課題」(2022年11月13日)
第165回大会プログラム、予稿集はこちら

Chapter 24

横山晶子. 2022.『0から学べる島むに読本:琉球沖永良部島のことば』東京:ひつじ書房.
配信による解説つき。著者リサーチマップはこちら。言語継承をめぐる取り組みについて、新聞への寄稿もされています(背景として、Chapter 24で述べられる事例が参照されています)。